一般的に土地の購入、または注文住宅などを新築する場合、その土地の環境や利便性、治安、さらには安全に対するリスクなど、多くの方が情報を収集して検討します。
ところが、予想しないトラブル、あるいは珍しいできごとが発生することも、不動産の特徴です。
例えば、福岡県内でようやく見つけて購入した注文住宅用の土地から、ゴミまたは歴史的なものを感じさせる土器などが出てきた場合、どうなってしまうのか?
そこで今回は、不動産業者やハウスメーカー、建築業者以外は、あまり遭遇することのない地中埋設物について解説します。
地中埋設物とは、地中に埋まっている廃棄物やゴミ、がれきなどを指すことが一般的です。
「地中障害物」とも呼ばれることがあり、具体的な例としては瓦やコンクリート、鉄くずなど、建築廃材をイメージしてもらうとよいかもしれません。
地中障害物以外の埋設物としては、水道菅やガス菅などの生活インフラに必須な物もあれば、歴史的に価値のある埋蔵文化財なども地中埋設物の一種といえます。
地中埋設物は前述したように、
の3種類について、ひとつずつ簡単に説明します。
埋蔵文化財とは、文化庁の公式サイトから引用すると、
土地に埋蔵されている文化財(主に遺跡といわれている場所)のこと
を言います。
埋蔵文化財の所有権や権利関係については、文化財保護法によって定められています。
出土品については、発見者が所管の警察署長へ提出することになっており、その後、教育委員会が文化財かどうかの鑑査を行う流れです。
仮に文化財であった場合、所有者が判明しないものについては、原則、落とし物としての扱いになり、権利としては都道府県に帰属されることになるため、個人での保管はできません。
つまりお宝や家宝として、土地の購入者がそのまま所有することはできないわけです。
埋蔵文化財は国民の共有財産という位置づけであり、大事に保存され、発掘調査の成果を公開する活動などのために利用されます。
文化財保護法による出土品の所有者や権利関係については前述しましたが、福岡県や市区町村での対応について調べてみました。
福岡県においては、埋蔵文化財に関して、
が定められています。
上記の条例や規則についての詳細は割愛しますが、概要について説明します。
ただし市区町村でも、独自の条例などが定められているため、あくまでも参考としてご覧ください。
福岡県文化財保護条例は、昭和30年4月に制定されています。
この条例に基づいて、福岡県文化財保護審議会が、
などを行って、県内での文化財保護を図っています。
主管は、教育庁教育総務部の文化財保護課で、
などの取り組みが行われています。
文化財保護課の所管施設である九州歴史資料館は、博物館としてだけでなく、埋蔵文化財センターとしての機能を併せ持った、文化財保護行政の拠点施設です。
一方、福岡県埋蔵文化財発掘調査規則は、福岡県文化財保護条例の施行規則で、埋蔵文化財の発掘調査に関する手続きや方法などを定めたものです。
福岡県は文化財保護行政がしっかりと確立されています。
不動産業者やハウスメーカーでは、分譲地の開発、注文住宅用の土地の販売に先立って、対象のエリアが埋蔵文化財包蔵地に指定されているかどうかをチェックしています。
埋蔵文化財包蔵地とは、埋蔵文化財の存在が知られている土地のことで、全国で約46万カ所もあり、毎年9,000件程度の発掘調査が行われています。
もし注文住宅用の土地を地盤調査している最中に、遺跡や土器のようなものが出てきた場合は、即座に工事を中止して自治体に届出をしなければなりません。
その後、出土したものが歴史的価値があるものかどうか、調査(試掘)が入ることになります。
試掘の結果によって文化財である可能性が高い場合は、本格的な発掘調査である、本掘の段階へと移行します。
その間は工事は中止とならざるを得ません。
独自の調査で得られた事例のひとつですが、約1,000㎡の店舗の新規出店にともなう工事で、本掘に至ったケースを紹介します。
具体的な地域や情報提供者については割愛しますが、縄文時代の集落跡および土器などが出土し、約450万円の金銭負担が発生しています。
3~4ヶ月におよぶ発掘調査となったことから、店舗の建築計画にも大きな遅れが発生することなったものです。
仮に個人の自己専用住宅、注文住宅用の土地も対象ですが、公費でまかなわれます。
法人では事業主の負担となることから、約450万円の支出となったものです。
前述の事例では、事業用で法人が所有する土地であったため、調査費用の負担が発生してしまっていますが、個人が所有する場合は国庫補助金の適用があり、費用負担の心配はありません。
ただし、本掘まで進むと建築工事計画の大幅な変更は免れないと言えます。
試掘から本掘終了までは、建築工事を進めることができません。
多くの場合、数週間から2~3ヶ月以内で終了するケースが殆どですが、その期間は非常に長く感じます。
確率としては低いですが、大規模な遺跡の出土ともなると、年単位で工事がストップ、挙句の果てには、いつ再開できるかわからないといった事態も想定されます。
注文住宅用の土地での出土となると、お宝の出現だと喜んでよいのか複雑な心境の中での建築計画変更ですから、自治体と不動産業者、ハウスメーカーとの間で調整していく他ありません。
現在の住まいが賃貸住宅であれば、退去のタイミングもずれ込みますし、新年度にかかるようであれば、職場への通勤や学校への通学にも影響が及びます。
一方で、大規模な分譲地の開発途中での出土となると、不動産業者やハウスメーカーにとってはかなりの痛手です。
売り出す時期も変わりますし、購入予定者も新生活プランにも響きます。
調査が試掘で終わった場合の費用負担は、市町村負担であることが一般的で、土地の所有者や建築主側の負担はありません。
また本掘まで至った場合でも、いわゆる一般の住宅においては、前述したように国庫からの補助金、具体的には国・県・市町村がそれぞれ分担するため実質負担は0になるケースが殆どです。
ただし、法人が所有する店舗や工場、アパート・老人ホームなどの共同住宅の場合、本掘まで至るとなれば、開発面積や出土内容にもよりますが、やはり相応の費用負担は免れません。
大規模な工場のレベルになると、億単位に至るケースもあります。
福岡県の隣の佐賀県では、ヤクルトの工場建設中に吉野ケ里遺跡が発掘されたことは有名な話です。
埋蔵文化財関連では、最大級レベルの出来事と言えます。
発掘調査は、1983年から1985年まで行われ、弥生時代の土器や石器などの遺物が1万点ほど出土したとのことです。
これらの遺物は、佐賀県立博物館に保管されています。
さらにヤクルトは、吉野ヶ里遺跡の保存と整備にも協力しており、工場敷地内に遺跡の展示館を建設、遺跡の周辺に遊歩道を設けるなど、大きく貢献しています。
地中埋設物には廃棄物を中心とした地中障害物、生活インフラに必要な配管類、埋蔵文化財などがありますが、特に注意したのは埋蔵文化財と発覚したときです。
生活インフラに必要な配管類は、埋まっていた方が逆に良いわけですが、埋蔵文化財となるものが出土した場合は、工事が中断することになります。
個人の注文住宅用土地に、埋蔵文化財らしきものが出てきた場合の費用負担はありませんが、もしものときは建築計画の変更は覚悟しなければなりません。
土地の購入後に慌てなくて済むよう、不動産業者やハウスメーカーには、地中埋設物についての対応について、確認しておくとよいです。
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