火災保険は、建物火災に対する経済的損失をカバーすることが主な契約の内容となります。
しかし実は、盗難被害においても、ある程度の補償が可能なのです。
今でこそホームセキュリティの充実で、空き巣被害は平成15年から減少に転じており、令和2年中は61万4,231件と戦後最少を更新しています。
参照: 住まいる防犯110番
それでもなお1日に約58件も発生していることから、空き巣による盗難被害の補償についても検討の余地はあります。
そこで今回は、火災保険での盗難に対する補償について紹介します。
火災保険は「保険の対象」ごとに契約するしくみです。
保険の対象、つまり補償内容については、
この3パターンの中から選んで契約するかたちとなります。
「建物」のみ加入した場合、損害時の補償は「建物のみ」となってしまい、家財は対象外となってしまいます。
また自分の住んでいる地域で起こり得る自然災害のリスクや日常生活における事故のリスクを考え、保険内容に組み込まなければなりません。
例えば風災、水災、大雪などこれらの自然災害に備える為に火災保険があります。
災害の他に、日常生活でのリスクも補償対象とする事も可能です。
空き巣が入ったことによる建物や家財の破損、盗難、もしくは給水設備の詰まりや漏水による水濡れなども補償対象として組み込むことができます。
火災保険は必要に応じて補償の対象を選択し、加入する保険となっています。
加入前に、何に対しての補償に備えるかを考えて選択する事が重要です。
火災保険でいうところの「家財」と「建物」について、まずは簡単に説明しておきます。
家財とは、建物内に収容されていて、被保険者または生計を共にする親族が所有する生活用の財産のことを言います。
保険証券記載の建物内に収容されているものは、特別の約定がない限り、保険の対象となる家財との認識でよいでしょう。
建物とは、土地に定着し、屋根及び柱または壁を有する居住のみに使用されるものをいいますが、土地は含みません。
門や堀、車庫など、その他付属するものも保険の対象に含まれています。
火災保険では名称通り、火災に対しての補償はもちろんの事、落雷や破裂・爆発、水災、風災、雪災、雹災(ひょうさい)、騒じょう、突発的事故、盗難などが基本的な補償対象となっています。
保険会社によって基本の補償範囲に違いはありますが、意外にも広範囲にわたっていることが特徴です。
その他にもオプションで、地震や賠償リスクなどに応じた補償に備えることができます。
マイナーな部分では、漏水による水濡れ、思わぬ破損や汚損も保険金の対象となります。
例えば、掃除中に誤って家具をぶつけてドアを壊してしまった場合などです。
日本で暮らす限り、地震に対する備えは検討の余地ありです。
国の被害者生活再建支援制度など災害時の公的支援制度もありますが、この制度による支払額は最高300万円と支援に限りがあります。
それを踏まえると地震保険加入の必要性は高いといえます。
また火災保険では、火災などにより建物、家財に生じた損害を補償することができますが、地震による火災の損害や地震等による倒壊などは補償の対象としていません。
このため地震等による火災や倒壊などの損害に備えるためにも、地震保険は大きな役割を果たします。
地震保険の補償は、地震等を直接または間接の原因とする火災、損壊、埋没によって、保険対象に生じた損害の程度が「全損」、「大半損」、「小半損」、「一部損」に該当する場合に、保険金が支払われます。
火災保険と違い、損傷具合で保険金支払額に一定の率を乗じた額が保険金として支払われます。
火災保険での盗難被害に対する補償は「物」だけではなく、盗難時に破損されたドアや窓なども対象となります。
注意点として火災保険で「建物の補償」と「家財の補償」に加入している場合となりますので、加入する場合は注意してください。
盗難被害についての補償ですが、盗難、窃盗による損害が生じた際に補償の対象となりますので、盗難が未遂であっても補償の対象物に破損、汚損があった場合は補償の対象となり、保険金が支払われます。
また保険の対象である家財が屋外にある間に盗難にあった場合は、保険金の支払い対象から外れてしまいます。
主に生活に必要な家具や家電、通貨、預貯金証書などが対象です。
なお、預貯金とは通帳や預貯金引出用のカードなどを示しています。
注意点としては貴金属、宝飾品、その他美術品のうち、1個または1組の価格が30万円を超えるものは、保険証券に明記されていなければ補償の対象とならない可能性があることです。
保険の対象にするには保険申込書に記載するなど、契約時に手続きが必要となりますので、保険代理店とよく相談してください。
保険金が支払われないケースとしては、保険契約者、被保険者、法定代理人などの故意もしくは重大な過失や法令違反によって生じた損害が該当します。
また、火災、水災、風災など保険事故時における紛失や盗難については判断が難しい局面があるため、支払いされないケースが多いです。
一般的な損害に対する給付内容からおさらいしておきます。
保険の対象である建物や家財に損害が発生した場合、それらを損害発生前の状態に戻すため、実際に生じた損害を補償するものです。
保険事故が発生した場合に、実際に生じた損害額を算出したうえで、保険金を算出する流れとなります。
事故発生 → 損害調査 → 損害額の算出 → 支払保険金の算出 → 保険金の支払い
損害額とは保険の対象を事故発生前の状態に戻すために必要な金額の事です。
実損払いの場合は再調達価格(新品の価格)を基準として損害額を算出しますが、家財が盗難被害にあった場合の損害額は再調達価格を適応しています。
盗難、盗難未遂によりドア、窓などに生じた損害に対する保険金を算出する際には、その対象が修理可能な場合、修理に伴って生じた残存物の価格から修理費を差し引いた金額が損害額となります。
支払保険金の算出については、
免責とは契約時に設定する自己負担額のことです。
0円、1万円、3万円、5万円などの設定により、保険料の負担も異なります。
保険金支払時期は保険会社の保険約款によって異なりますが、保険金の請求完了日から原則として、30日以内に保険金は支払われます。
まずは保険会社(代理店)に連絡を行い、損害状況など必要な内容を伝えます。
保険会社から主に契約内容の確認、補償の内容の案内があり、保険請求に必要な書類を保険会社に送付します。
損害状況によっては罹災証明書や損害箇所の写真の提出が求められるケースがありますので、できればあらかじめ調達しておくと手続きがスムーズです。
保険金額が確定すると契約者の了解を得たうえで入金されます。
支払額の明細が届きますので、契約通りに支払われているか確認しましょう。
火災保険では盗難された物だけでなく、破損された窓、ドアも補償の対象になりますので、幅広い補償を得られるように備えておく事が重要です。
実際に被害にあい、再発防止のため防犯カメラの設置やドアの鍵交換などを行った場合、火災保険の商品や加入している特約によっては費用が補填されます。
ゆえに加入前に十分に確認しておくことをおすすめします。
代表的な特約として「事故再発防止等費用特約」があります。
前述したように、盗難被害にあったことで再発防止としてドアロック交換や防犯カメラ設置の費用を補填してもらえます。
火災保険の商品によっては補償範囲が異なるので十分に確認する事が重要です。
次に「臨時費用補償特約」です。
保険の対象となる損害が発生したときに、宿泊費や交通費など臨時に支出するさまざまな費用に対して、損害保険の一定割合が支払われます。
盗難被害への補償には直結しませんが、例えば、盗難されて困る大事な家財を保管するための費用などに充てることもできます。
損害が発生した際は何かと費用が出てしまいますので、この特約に加入していると心強いです。
最後に「携行品損害補償特約」を紹介しておきます。
この特約は保険対象の建物ではなく、偶然の事故により損害が発生した場合に保険金が支払われる特約です。
バック、カメラ、旅行券、時計等が盗まれる、壊れる等で損害が発生した場合、持ち物1つ(1個、1組)につき10万円を限度として、損害が発生した物の時価もしくは修理費用のいずれか低い金額を保険金として支払うものになります。
火災保険は補償の対象を選択し、加入する商品となりますので、何を対象にするかを考えて選択する事が重要です。
空き巣や盗難に対しての補償を加えていると万が一の場合も補償され、再発防止にも繋げる事が出来ますので、より一層安心することができます。
家族と家財を守る第一歩は、自分の安全は自分で守るという防犯意識を高める事です。
日々の戸締りや長期の留守の際の配達止め、玄関の主錠と補助錠の二重ロックなど、細かなところから気を配るなど、小さな心がけが大きな安心を得る一歩目となります。
本記事では、あくまでも火災保険に関して一部を紹介したに過ぎず、情報の正確性を担保するものではないため、一切の責任は負いません。
よって具体的な相談等は、損害保険会社または損害保険代理店へお願いします。