国税庁が毎年発表する路線価は、主に相続税や贈与税の算定基準として知られていますが、実は土地価格の動向を読み解くヒントとしても活用できます。
今回、福岡県の路線価は前年比で6.0%上昇し、全国で東京都、沖縄県に次いで3番目の伸びを示しました。
都市部だけでなく郊外の住宅地にも影響が及んでおり、注文住宅用の土地選びや資金計画において無視できない情報です。
この記事では、地価上昇がどのエリアで起きているのか、その上昇が注文住宅の土地選びや建築費にどう関わってくるのかをデータとともに考察し、土地探しのポイントもお伝えします。
福岡県全体の路線価の伸び率は前述のとおりですが、都市部と郊外では、どの地域で上昇が顕著だったのか、具体的に挙げてみました。
地価上昇の背景や要因を探ってみましょう。
福岡市の都心部、特に中央区や博多区といった主要エリアでは、安定した路線価の上昇が続いています。
最高値は45年連続で、中央区天神2丁目の渡辺通りの968万円(1平米)です。
九州最大の商業地である天神地区は、現在「天神ビッグバン」と呼ばれる再開発プロジェクトが進行中で、老朽化が進むビルの建て替えが進み、オフィス・商業施設への変貌が加速しています。
博多区でも、国際線ターミナル拡張を中心としたリニューアルを経てグランドオープンした福岡空港は、国内線においても複合施設の建設中(2027年夏開業予定)です。
一方で、都心部の土地はすでに高額で、個人の注文住宅用としては予算面でのハードルが高いという声も少なくありません。
郊外でも路線価の上昇が顕著に見られ、久留米市・春日市・大野城市といった福岡市周辺の住宅地での伸びが特に目立ちます。
久留米市では、東町西鉄久留米駅前通りが前年より5.4ポイント増えて、16.1%の上昇です。
駅ビルのリニューアルオープン効果が大きく、福岡市への通勤圏としても人気が定着しています。
春日市・大野城市は福岡都市圏の南部に位置し、土地価格が福岡市内よりも抑えられるうえに、都市高速やJR、私鉄の交通網も充実しています。
交通の利便性に加え、静かな住環境が確保されている点から、注文住宅を希望する層の需要も年々増加中です。
郊外の特徴は、都心部と比べて大きな区画の土地が確保しやすいた、建物にこだわりたい場合は狙い目の地域と言えます。
ただ、両市の土地が格段に安いわけではなく、利便性を含めた将来有望なベッドタウンとして発展途上のため、市内の土地価格には都心部にせまる物件もあります。
郊外で条件の良い、福岡県内土地情報が毎日公開される物件サイトで、春日市・大野城市に絞って検索してみてください。
路線価の上昇は、単に土地代が高くなるというだけでなく、付随する税金や資産価値、将来の売却時の展望など、さまざまな側面で影響を与える指標です。
この章では、注文住宅の観点から、具体的に何がどう変わるのかを考察していきます。
路線価がダイレクトに影響を与えるが土地価格です。
建築資材の上昇によって建築費の負担が増す中、土地価格まで上がると住宅の建築予算も底上げせざるを得ません。
都市部や利便性の高い地域では実勢価格が高まっており、路線価の上昇がさらに後押しする二重構造が現状です。
郊外の注目地域である大野城市を例に挙げると、1平米あたりの土地価格相場は、1年前の96,915円から162,791円に跳ね上がっています。
仮に100平米(約30坪)の土地であれば、1年の間に約659万円の負担増です。
単に平米単価が路線価の影響を受けたけでなく、住宅需要が高まっている人気エリアでの競争激化、売主による強気の価格設定も背景として考えられます。
注文住宅全体の費用が膨らめば、建物の仕様を変更する、資材のグレードを一段階下げる、さらに郊外を離れたエリアへ選択肢を広げるなど対応策が必要です。
すでに理想の住宅プランを描いているほど、土地価格の負担が実現を阻む壁となるため、エリアが譲れないとなると資金計画から見直しが求められます。
また、土地価格の上昇は固定資産税評価額や登録免許税、さらには将来的な相続税評価額にも影響を及ぼすため、買って終わりではなく持ち続けるコストも想定しておくべきです。
路線価の上昇で、注文住宅の計画そのものを見直すケースもあります。
よくあるケースとしては、土地に割り当てる予定の金額が当初の想定と異なって不足することが判明し、建物部分の割り当てをどこまで下げるか、あるいは全体予算を引き上げるかという選択を迫られる状況です。
仮に、土地の予算として2,000万円を見込んでいたのに、希望エリアでは最低でも2,400万円が必要とするケースだと、差額の400万円をどう捻出するかが課題になります。
自己資金に余裕がなければ、住宅ローンの借入額を増やすなど対応が必要です。
ただし、住宅ローンの借入上限は金融機関によって制限があり、希望通りに融資ができるとは限りません。
そうなると建物の使用や建築資材・設備のグレードを下げる、延床面積を削るといった調整が現実的な選択肢となってきます。
予算配分のバランスを見直す際に重要なのは、優先順位の明確化です。
利便性を最優先にして駅近の土地を確保したい場合は、建物の設計での調整となりますし、建物の性能やデザインを重視するのであれば、やや利便性が劣るエリアを選択する決断も求められます。
予算配分に悩むなら、建物と土地のセットプランでの価格を表示する、物件サイトが便利です。
路線価が上昇している今、土地をどこで、いつ買うかの判断は非常に難しいところです。
価格高騰を承知で希望するエリアにこだわるか、それとも将来性のあるエリアで土地を見つけるべきか、答えは一つではありませんが、冷静に先を見据えて動くことが何よりも重要です。
この章では、今後の土地探しにおいて注目すべき視点を2つご紹介します。
すでに地価が上昇している都心部や郊外の注目エリアでは、今後も路線価の上昇は続く可能性はあるものの、上昇幅は徐々に縮小していく見方もできます。
そこで注目したいのが、これから発展が期待できるエリアです。
実勢価格や路線価が控えめでありながら、開発計画の有無や人口動態などから、今後の価値上昇が見込まれる地域を見極めるという考え方です。
春日市・大野城市などは若年層の転入超過が続いており、今後も住宅需要の増加が期待される地域なのは、もはや知られています。
ゆえに、ハウスメーカーや不動産会社が、分譲地の開発を進めている地域に着目すると、次の人気エリアが見えてきます。
具体的に挙げるとするならば古賀市・福津市・宗像市・筑紫野市・太宰府市などです。
交通網をはじめ住宅や商業施設の整備が進んでいるエリアであり、土地の価値も福岡市内や注目度の高い郊外より相場も抑えられています。
教育・医療・買い物などの生活利便施設も充実しつつあり、ファミリー層の支持も集めやすく、治安も安定しています。
福岡市へのアクセスも西鉄電車やJR九州の利用で1時間足らずの距離ながら、適度に自然環境も整っており、子育て世帯にも最適なエリアです。
地価上昇が目立っていない、言い換えれば街としての将来性のあるエリアで土地を確保できれば、コストパフォーマンスに優れた住まいづくりが実現しやすくなります。
街の将来性を見極めるもう一つの重要な視点が、インフラ整備や再開発プロジェクトの動きです。
熊本県ではTSMCの進出で、菊陽町をはじめ周辺地域も大変貌を遂げようとしている途中です。
このような国と地方自治体が一体となった大規模プロジェクトは稀なケースですが、福岡県ではやはり天神ビッグバンが起爆剤となっているのは、路線価からも見ても明らかです。
福岡市内が発展すると、その波及効果で周辺の知名度の低いエリアでも新たな鉄道路線の開通や都市計画道路の整備・主要駅周辺の再開発事業・住宅需要の増加など、数年以内に大きく変化する可能性が高まります。
これから発展が見込めそうな街は、日常生活の中からヒントは得られます。
たとえば駅から離れた住宅地ながらバス路線が整備されている、スーパーや病院が集積しているようなエリアは、候補地としてチェックしておきましょう。
土地の価格帯やライフスタイルとの適合性を見てみるのも、情報収集の方法のひとつです。
ただ、建築基準法によって建てられる建物の高さや建ぺい率・容積率の違いもありますから、どのような家が建てられるのか、ハウスメーカーに相談することをおすすめします。
苦労して土地を見つけたとしても、建てたい広さの住宅が実現できないとなれば本末転倒となるためです。
価格だけを頼りに土地を選ぶのではなく、「その土地は相場に合っているか」「将来、街はどう変化していくのか」という背景にも目を向けることが、これからの土地探しには欠かせない視点となります。
路線価の上昇は、福岡県の都市部では、まだ続くと考えてよさそうです。
郊外にも路線価上昇の波が広がる中で、土地選びに関しては、目利きの力がこれまで以上に問われる時代になっています。
土地価格や外観、周辺環境だけで土地を選ぶのは、都市部や注目を集めている郊外では難しいことが予想されます。
価格が上がるからといって焦って購入するのではなく、将来性や生活利便性、家族のライフスタイルに合った土地を、ハウスメーカーや不動産業者と二人三脚で選ぶのが、後悔しない家づくりの第一歩です。
今後の地価動向や都市計画の情報をしっかりキャッチし、冷静かつ柔軟に対応していきましょう。
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