土地選びでは、駅までの距離を重視する傾向があります。
しかし、住宅の立地として優れているかどうかは、それだけで判断できるものではありません。
実際には、生活の利便性や周辺環境、災害リスク、将来的な資産価値など複数の視点から総合的に判断することが求められます。
そこで今回は、ハウスメーカーとしての知見をもとに、失敗しない土地選びのために押さえておきたい7つの条件を整理しています。
家づくりのスタート地点ともいえる、土地選定の具体的な視点をお伝えします。
住宅建築では、都市計画法と建築基準法を遵守する必要があり、さらに神奈川県ならではの地区計画も考慮しなければなりません。
いわゆる建築制限は、面積や間取りに大きく影響を与えることから、土地選びの際には物件資料に記載されている法令順守の項目もチェックしておく必要があります。
土地面積に対する建築面積の割合を建ぺい率、延床面積の割合が容積率です。
たとえば建ぺい率60%、容積率200%のエリアで注文住宅を建築する場合、40坪の土地では建築面積は24坪、延床面積は80坪以下にしなければなりません。
こうした規制はエリアごとに設定されているため、土地の物件情報で必ず確認すべき項目です。
土地が角地、あるいは建物が防火仕様だと緩和されるケースもあります。
都市計画法に基づき、土地の利用目的や建築物の種類を制限するために定められた制度が用途地域です。
大きく「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分類され、さらに細分化された13種類が存在します。
分類 |
用途地域名 |
主な特徴・建築物例 |
住居系 |
第一種低層住居専用地域 |
低層住宅、小中学校など静かな住宅街を形成 |
第二種低層住居専用地域 |
第一種に加え、150平米以下の店舗なども建築可能 |
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第一種中高層住居専用地域 |
中高層住宅、病院、大学、500平米以下の店舗など |
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第二種中高層住居専用地域 |
第一種に加え、1,500平米以下の店舗や事務所も建築可能 |
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第一種住居地域 |
住宅、3,000平米以下の店舗・事務所・ホテルなど |
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第二種住居地域 |
第一種に加え、カラオケボックスなども建築可能 |
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準住居地域 |
道路沿いの自動車関連施設などと調和した住居の環境を保護 |
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田園住居地域 |
農業と調和した低層住宅の環境を保護 |
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商業系 |
近隣商業地域 |
住宅、店舗、小規模の工場など地域住民の日用品供給を目的 |
商業地域 |
銀行、映画館、飲食店、百貨店など商業活動が中心 |
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工業系 |
準工業地域 |
環境への影響が少ない工場やサービス施設など |
工業地域 |
住宅や店舗も建築可能だが、主に工業の利便を増進 |
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工業専用地域 |
住宅や店舗などは建築不可 |
ほとんどのエリアで注文住宅は建築できますが、神奈川県では横須賀市の一部が工業専用地域です。
建築した建物の影によって、隣地や道路が暗くなることを防ぐ規制となっており、「道路斜線制限」や「隣地斜線制限」という名称で呼ばれます。
これらの高さ制限や日影規制は、物件情報として明記する義務はないため、不動産会社もしくはハウスメーカーに確認する必要があります。
根岸森林公園や本牧小学校があるエリアは、第一種低層住居専用地域の中でも特に制限が厳しく、建ぺい率40%・容積率80%です。
さらに、街によっては境界線から建造物までの距離を1.5m以上離さなければならない規制も追加され、コンパクトな家しか建築できないことも少なくありません。
規制が厳しいエリアは横浜市の住宅街に点在していますので、土地選びをスタートした段階で事前に調べておくことをおすすめします。
その他の神奈川県のエリアでも最新の土地情報がありますので、ご覧ください。
接道状況や土地の形状は、建物のプランニングや住み心地に大きく影響します。
同じ面積でも形や接道の仕方によって、実際の使い勝手や建築可能な範囲が異なるからです。
土地選びで見落としがちな形状や接道に関してお伝えします。
車2台分の並列駐車場と延床面積30坪前後の住宅を想定している場合、第一種中高層住居専用地域であれば、40坪程度の広さの土地で十分に実現可能です。
ただし、間口が狭く奥行きが長いと採光が確保しにくく、窮屈な住宅になる可能性があります。
モデルハウスのような間取りを希望するなら、大体、間口約8m・奥行約17mの土地が理想的で、この比率を参考に土地を選ぶことをおすすめします。
間口が狭く、奥への細い通路がある旗竿地は、建築面積が小さく、さらに周辺の住宅に囲まれた環境になりやすいのが欠点です。
道路幅が4m以下の場合はセットバックが必要となり、敷地の一部を道路として扱わなければなりません。
旗竿地でセットバックが必要な土地は、好まれる傾向ではありませんが、相場よりも土地価格が安く設定されるメリットもあります。
私道に関する権利関係は複雑であり、トラブルを避けるためにも、事前に専門家と相談しておくことをおすすめします。
たとえば私道部分で、ライフライン(電気・ガス・水道など)の引き込み工事が必要な場合、所有者へ書面による通知をしなければなりません。
他の所有者との共有持分がある場合には、管理や修繕費の負担についても取り決めが必要です。
住宅ローンの審査においても、承諾書を求められるケースもあります。
神奈川県の土地相場は比較的高く、予算次第では価格の安い不整形地も候補に入れる選択肢もあります。
たとえば旗竿地であれば、通路部分に駐車して建築面積を広く確保する、いびつな土地に合わせて建物の形状を変更することで、デッドスペースを減らすことも可能です。
不整形地を活かす建築プランは、ハウスメーカーもノウハウを持っているため、オプションの位置づけでの相談も損ではありません。
土地の地盤・高低差・方角は、見た目にはわかりにくい条件ですが、建築コストや生活の快適性に直結する重要な要素です。
地盤改良工事では、平均して数十万円から100万円以上の費用負担となります。
埋立地や軟弱地盤のエリアでは、表面では判断できないため、購入前に地盤調査報告書や近隣事例の確認が重要です。
地盤の状態によっては、建築プラン自体の見直しが迫られるケースもあります。
造成費や擁壁工事の費用負担がある反面、眺望や採光の良さを活かした住まいづくりが可能です。
斜面地をうまく利用すれば、地下ガレージやスキップフロアなど、個性的な住宅になるメリットもあります。
一般的には、南東側角地が最も日当たりが良く、北側道路面は劣るとされています。
北向きであっても天窓などで採光は確保できますし、近年の猛暑と断熱性能の高さから、必要以上の室内温度上昇を避けるため、あえて選択するケースもあります。
周辺環境と住宅性能次第では、南向きへのこだわりが住宅プランの柔軟性を制限してしまうことも頭に入れておきましょう。
川崎市臨海部や横浜ベイエリアは、地盤が軟弱な地域として知られており、構造上の対策が不可欠です。
一方、丘陵地帯の多い相模原市や横浜市北部などは、地盤が安定している傾向があります。
建築希望エリアの地盤特性を把握することが重要です。
地盤調査は土地の購入後が一般的ですが、神奈川県の売り出し中の土地では、地盤調査報告書が存在する物件もあります。
快適な新生活にするためには、周辺施設が充実しており、インフラが整備されていることも重要です。
治安面も含めて、ストレスが蓄積されない環境を手に入れたいものです。
工場や商業施設があると、騒音や振動・悪臭発生の懸念があります。
土日での見学を主体としていると、当該施設が稼働してないため、気づきにくいものです。
できれば平日の日中と夜に、周辺環境の調査をおすすめします。
駅周辺の再開発計画や土地区画整理事業を公開している場合、数年後には商業施設などが立ち並ぶ可能性があります。
このようなエリアは、ライフインフォメーションが整うだけでなく、地価上昇の可能性も高いため、将来は高値での売却という手段もとりやすくなります。
水道・電気・ガスといった基本的なインフラだけでなく、高速インターネット環境の整備状況も気になる要素です。
テレワークやスマートハウス、あるいはスマートホームを前提としたライフスタイルを考える場合、光回線が引けるかどうかは大きな判断材料になります。
新興住宅地では整備中の場合もあるため、通信会社や不動産会社に事前に確認しておきましょう。
駅からの距離だけでなく、最寄り駅までの交通手段や混雑状況、バスの本数なども重要な情報です。
通学路の安全性も見逃せません。
自家用車を使う場合には、主要道路の利便性だけでなく、住宅街の路地での運転のしやすさ、視認性も実際に確かめておくと安心です。
地震や豪雨などの自然災害に備えることは、土地選びにおいて見逃せない重要な視点です。
立地条件によっては、ハザードリスクの高い区域であることに後から気づくケースもあります。
災害リスクを事前に把握し、安心して暮らせる土地を選ぶための基本的な確認ポイントを覚えておきましょう。
各自治体が公開しているハザードマップで、洪水・津波・土砂災害などのリスクを確認することは、もはや土地選びの基本です。
想定浸水深や過去の災害履歴などが地図上に示されており、住宅の安全性を判断する材料になります。
無料で確認できるため、検討エリアごとにチェックしておくことをおすすめします。
斜面地や山の近くでは、土砂災害警戒区域や特別警戒区域に指定されているケースがあります。
都市部でも急な豪雨による内水氾濫や下水逆流といったリスクがあるため、地形や排水計画も要確認です。
海抜や近隣の河川の氾濫に関する情報も、頭に入れておきます。
ハザードマップには避難場所が掲載されていますので、家族全員で避難経路を実際に歩いて確認することも大事です。
小中学校・公民館・公園などが指定されている場合が多く、自治体の防災マップや地域防災計画で調べられます。
坂道や川を越えるルートがないか、夜間の安全性も含めて確認します。
災害リスクの少ない神奈川県のエリアで土地が見つかると、それだけで大きな価値を得たも同然です。
子育て世帯や将来を見据えた住まい選びにおいて、教育・医療施設の充実度は重要な判断基準です。
安心して暮らせる地域かどうかは、学区の質や医療機関の数だけでなく、アクセスやサポート体制にも左右されます。
指定される学区によって、通える小中学校が決まるため、学校の教育方針や評判も土地選びの材料になります。
地域によっては進学実績や保護者の関与度が大きく異なるため、口コミや学校公開日などを活用した情報収集が有効です。
通学路では、交通量や見通しの良し悪し、交差点の有無の確認が非常に重要です。
歩道の整備や街灯の数、防犯カメラの設置状況なども含め、時間帯を変えて現地を歩いてみると、状況の変化がわかります。
自治体による通学路点検マップや防犯情報も参考にしたいところです。
日常の診療に便利なクリニックから、救急対応可能な総合病院まで、医療機関の種類と距離の確認は、いざというときに役立ちます。
小さなお子様や高齢者のいる家庭では、夜間・休日に受診できる体制が整っているかも安心材料になります。
地域ごとに、子育て支援センターや一時保育、育児相談窓口など、行政サポートの手厚さに違いがあります。
待機児童の有無や保育園の入園難易度も確認しておくと、住み始めてからの対応に差が出ます。
土地選びでは、現在の住みやすさだけでなく、将来的な価値の維持や向上も視野に入れることも重要です。
エリアの発展性や人口動態を含めて、安心して住み続けられるかどうかを見極める判断材料を整理します。
人口が増加している地域や、若年層の流入があるエリアは、将来的にも需要が見込まれ、資産価値が安定しやすい傾向があります。
自治体の成長戦略や教育・子育て政策も、将来性を判断する一つの手がかりになります。
駅の再開発や土地区画整理事業など、街の資産価値が上昇する事業計画が決定されると街の利便性は一気に変わります。
現状のインフラや周辺設備も大きく改善されることがありますので、神奈川県のホームページやプレスリリースは定期的にチェックしておくことをおすすめします。
空き家率が高く、高齢化も進んでいる地域では、閑散とした雰囲気になりやすく、街の再開発計画も難しいといえます。
若い世代の転入が多い、あるいは期待できるエリアに絞って土地を手に入れると、資産価値向上も期待できます。
今回、ご紹介した7つの条件は、いずれも、家を建てた後の暮らしを左右する重要な視点です。
駅に近いことが本当にライフスタイルにマッチするのか?
ステレオタイプの土地選びに終始すると、生活のしやすさや将来的な資産価値において思わぬギャップに悩むことになります。
長く安心して暮らせる、自分たちにとっての好条件とは何かを考えた土地選びをおすすめします。
神奈川県の土地探しは、リブワークのe土地netにお任せください。
また、神奈川県で注文住宅を建築される方で、土地情報をお求めの方はリブワークにぜひご相談ください。