土地の取引は、個人間で行われることは大変珍しいことで、一般的には不動産業者が仲介することになります。
なぜ仲介するのかと言えば、取引のステップにおいて、プロのサポートが不可欠であると同時に、さまざまな法律も絡むからです。
土地に関する情報量や交渉力、経験などは、個人間では大きな差が生まれやすいですし、またトラブルのきっかけになることから、不動産業者が間に入って調整やサポートの役割を果たすことになります。
しかも大きな金額が動くわけですから、契約に関わる当事者は公平で対等な立場で行われなければなりません。
そのために土地を含めた不動産の売買は、レジで決済というシンプルな方法ではなく、関連する規制や法律のもとで合意形成した上で、成立させることになります。
実際に、どのような法律が関わってくるのかを改めて紹介します。
実際の取引では直接的に関わる法律ではないものの、土地の利用あるいは用途、開発、取引上の規制に関する定めたルールが、法律として存在しています。
街が好き勝手に開発されると住みにくくなることが予想されます。ルール無用の開発などを防止するために、都市計画区域(市街化区域、市街化調整区域など)を定めています。
また、市街化区域における土地の利用や用途のほかに、建物の建ぺい率や容積率などの規制についてルール化しているのが都市計画法です。
土地を短期間で売買して儲けを得るような取引や無暗に開発することを防ぐための法律です。
法律名の通り、計画的な国土の利用を図るために存在します。
売主と買主がともに個人の場合は、ほぼ無関係ではありますが、例えば、市街化区域では2,000㎡以上の土地の売買契約には届出が必要といったルールが定められています。
土地の売買や仲介を手掛ける不動産業者は、関連する法律のもとで日々取引を行っています。
取引を前提にした土地に関する情報などは、一般消費者は持ち合わせていないことが多いため、消費者保護を目的とした法律が関わってきます。
法律制定の目的としては、
ということが、第一章総則の第一条に書かれています。
つまり土地や建物の購入や売却しようとする場合において、損害の防止と利益の保護に深くかかわる法律です。
法律という括りではありませんが、不動産業界が独自に制定した広告ルールということで紹介しています。
目的としては、
になります。
なお、宅建業法においても、
など、広告に関する規制について触れています。
消費者保護の観点から、民法に優先する規定として存在するのが消費者契約法です。
不動産業者と一般消費者とでは、交渉力、情報量、取引経験、スキル等に差があることによって、どうしてもフェアな取引が難しくなります。
ゆえに不動産業者と一般消費者との間での契約(消費者契約)を対象に、不動産業者サイドの不適切な行為によって、一般消費者が誤認してしまう、どこか納得しないままに締結した契約が執り行われることも想定されます。
ゆえに消費者契約法の下では、そのような契約を取り消しが可能です。
また、消費者の権利を不当に損なう内容が見受けられる場合は、その内容においては無効とすることも示されています。
建物の所有を目的とする土地及び建物の賃貸借契約において、民法より優先される法律が借地借家法です。
具体的には、
などについてのルールが示されています。
借地借家法には、強行規定というものが存在します。
これは当事者間で法によるルール外の合意が成立したとしても、借地借家法の規定が適用されるものです。
絶対に守らなくてはならないルールは、都合よく合意に至ってもムダになるというイメージだと考えると良いでしょう。
土地の取引では売買契約書が作成されますが、必ず収入印紙を貼らなければなりません。
文書の種類ごとに印紙税額が決まっているからです。
対象となる文書の種類を、一部、例として挙げると、
などが相当します。
土地の売買契約に記載される金額が、仮に2,000万円とした場合、契約書1通につき印紙税額は2万円です。
建物を建てる目的で土地を購入する際、後々、住宅ローンを利用する場合は、金銭消費貸借契約書(金消契約)には、収入印紙を貼ることになります。
ただし、不動産売買契約書の印紙税については、軽減措置が講じられていて税率が引き下げられていることもあります。
土地の所有権を第三者に証明あるいは主張(対抗)するためには、登記を欠かすことはできません。
登記は、
などを、第三者に明らかにすることが目的です。
不動産登記は法務局で手続きをしますが、司法書士が代行するケースがほとんどです。
費用削減のために購入者が自ら手続きをする方法もネットで情報は拾えますが、日常的に関わる機会が無いこともあって、登記に関する理解不足、必要な書類の不備などで申請がスムーズにいかないこともあります。
時間的余裕が無い場合は、司法書士に任せる方が無難でしょう。
不動産に関する権利の保全、取引の円滑化を図るために存在する法律です。
全国の登記所では、インターネットによる登記のオンライン申請が可能となっていますが、書面の提出でも対応されています。
どちらにしろ、登記申請する場合は、申請書や添付資料を揃えることが肝心となりますので、事前に準備すべき書類を知っておくと良いです。
例えば、初めて土地の登記をする場合の添付書類は、
を必要としています。
不動産登記の際、国に対して登録免許税を納付する義務が発生します。
その納税において、登録免許税の課税範囲、納税義務者、課税標準、税率、納付及び還付の手続きなどを定めた法律が、登録免許税法です。
なお、令和3年度の税制改正により、土地の売買による
について、税率の軽減措置が、令和5年3月31日まで延長となっています。
税率は、それぞれ、
になります。
法律や規定で定められた中で、土地の取引、その後の管理運用などを実行支援するために必要とされる国家資格についても言及しておきます。
【国家資格一覧】
不動産関連の国家資格では抜群の人気と知名度を誇ります。
毎年25万人程度の受験者数にもなり、不動産会社には一定の割合で資格者を在籍させておく必要があるため、不動産業界への就職や転職には欠かせない資格です。
業務上では、「重要事項の説明」「重要事項説明書への記名押印」「書面(契約書など)への記名押印」について、有資格者の独占業務になっています。
主に土地を調査、測量して不動産の状況を登記の記録に反映させる専門家です。
また依頼によって不動産の表示に関する登記の申請手続きを行います。
地積測量図が無い物件に対して、面積の再測量やあやふやな境界を明確にする必要がある場合は、土地家屋調査士に依頼することにより解決を図ります。
土地家屋調査士の試験も難関であり、合格率は10%あれば良い方で、合格者数も400名前後で推移しています。
業務内容によっては法定にも立てる市民の身近な法律家が司法書士です。
合格率は約4%程度と、やはり難易度は高めの国家資格で、不動産の取引では主に登記関係をサポートします。
その他、会社設立のための商業登記の代理、成年後見人としての監督も司法書士の業務範囲です。
ここ最近では、債務整理の相談についても司法書士のニーズは高まっています。
不動産の適正な価値を鑑定する資格が不動産鑑定士です。
合格者は約5%前後、かなり難関な国家資格の部類で、事実上、不動産関係の国家資格では最高峰と言っても過言ではありません。
価値の鑑定のほかに適切な利用法についてのコンサルティングを主な業務としています。
なお、不動産鑑定評価は不動産鑑定士の独占業務です。
土地取引に関わる法律を中心に、不動産取引で知っておきたい法律の種類ならびに国家資格について紹介しました。
マイホームを手に入れるには、土地と建物の両方が必要です。
どうしても建物ばかりが注目されますが、住宅を建てる前提での土地取引においては、やはり土地の場所などがポイントになります。
多くの人は一生に一度、少なくとも数百万円以上の資金を投下して土地を購入するわけですが、さまざまな法律や規定があるからこそ、一般消費者はマイホームに辿り着きます。
どうしても弱者となる一般消費者は、不動産業者の仲介によってよりスムーズに、そして満足度の高い取引が行われるのは、やはり法律や規定があるからです。
法律、規定、さらには不動産業者の情報量に取引経験値が加わることで、一般消費者は誤解や困惑の中で、不当な契約を締結せずに済みます。